最近古典読みました?(岩波茂雄著「岩波文庫論」)
青空文庫を読むブログなのに、他の文庫を読めと言わんばかりの作品を紹介するのはどうかと思いましたが、まあそれも一興でしょう。
岩波茂雄著「岩波文庫論」です。
岩波茂雄 岩波文庫論(青空文庫)
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岩波文庫
今における岩波文庫及び岩波書店の印象としましては「お堅い」というのが大きいように思われます。それは書籍そのものの質の高さが一種の気品と感じられるからでしょう。
本の内容から離れた話では「縁故採用」のみで採用活動を行い疑問視されることもありましたね。僕個人としては非常に費用対効果の高い方法だと思っています。得体の知れない人を短時間で見ぬかなければならない多くの採用活動では、優秀さを見抜くことはほとんど不可能ですし、できるなら超能力かなにかかと。しかし信頼のおける人からの紹介であればある程度の信頼もできますし、数もぐっと少なくなります。仕事に情熱のある人ならコネくらいは作ってみせるでしょう。
他には多くの出版社が委託販売なのに対して、岩波書店は責任販売制です。置いてない本屋があるのはこのためだなんて言われたりもします。一部では「岩波はマーケティングセンスがない」なんてことを言っている人も。
現代では多くの古典的名作を扱うという評価を得る一方で、少しお高く止まっている印象を受ける人もいると言えるでしょう。
岩波文庫の使命
岩波文庫は古今東西の古典の普及を使命とする。
岩波文庫の背景には円本の流行がありました。
円本とは廉価な全集形式の出版物で、1926年から流行したものです。それまで高価で読めなかった本が安く手に入るということで、書籍の普及に貢献しました。
しかし円本は“編集、翻訳、普及の方法などにははなはだ遺憾の点があった”ので、岩波茂雄氏はそれらの点を改善したいという思いがあったのです。
経済的価値高くとも本質的価値乏しいものはこれを編入しないことに特に意を用いるとともに、経済的価値低くとも古典的価値の豊かなるものはつとめて編入し、この点において岩波文庫本来の特色を発揮しようと思っている。
つまり売れる本ではなく、価値のある本を出すということ。この一文を見れば「マーケティングセンスがない」という指摘がいかに的外れかがわかるでしょう。
古典軽視
今では岩波文庫が家にあるだけでちょっと学のある感じがします。しかし逆に言えば学のないこと、古典を読まないことが当たり前の世界になっているとも換言できます。古典を読んでると変わり者扱いを受けることも。
西田幾多郎著「読書」*1でも言われていたことですが、枝葉の書物よりも読むべきは幹や根の書物です。古典軽視の傾向をなんとかしなければ、教養の無いペラッペラの人間で溢れることでしょう。