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社会人になる大学4年生に読んで欲しい(相馬愛蔵、黒光著「一商人として-所信と体験-」)

いまではパン屋なんて珍しくもありません。とはいえもちろん黎明期もあったわけですが、その時代を支えた新宿中村屋をご存知でしょうか。

新宿中村屋の創業者である相馬愛蔵、黒光氏が書くノンフィクション、

それが相馬愛蔵、黒光著「一商人として-所信と体験-」です。(相馬黒光は愛蔵の妻である良のことです)

 

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相馬愛蔵、相馬黒光 一商人として ――所信と体験――(青空文庫)

Amazon.co.jp: 一商人として 所信と体験 電子書籍: 相馬 愛蔵: Kindleストア

 

 

読み物として面白いノンフィクション

むしろ冒険のようには見えても、西洋にあって日本にまだない商売か、あるいは近年ようやく行われては来たが、まだ新しくて誰が行ってもまず同じこと、素人玄人の開きの少ないという性質のものを選ぶのが、まだしもよさそうであった。

115ページほどに及ぶ一商人、一パン屋のノンフィクション物語。国に家に人に歴史ありですから、当然常に繁盛してみえるパン屋でも内では苦労や工夫が随所にあるのです。それがためにもなり、話としても面白く、これが無料で読めてしまうとはありがたい限りです。

特に日本の歴史とともに歩んできた店ですから、とても親しみのわく内容となっています。ドラッカーも悪く無いですが、少し高尚すぎる感があると思う人はこちらから読むのをおすすめします。

 

経営者以外でも学ぶべき教訓

この本はもちろんいかに中村屋を経営してきたかということが書かれているのですが、お金のために経営してきたのではないという会社ですから、人生にも通ずる教訓を得られます。

私のところの経験によると、人は緊張すれば一時的には、平常の働きの五割増くらいまでの仕事をすることが出来るが、それ以上を望めば必ず失態を生じ、またその時は何とかなっても、後になって疲労が出て著しく能率を減ずる結果になったりする。

僕たちはやればできると思いながらその実どのくらいできるのかはわかっていない節があります。5割増が限度だと知っていれば懸命と無茶の線引きもできるのではないでしょうか。

すなわち狩野では出来ないことが浅野では出来たのである。これを見ても適材を適所におくということがいかに大切であるか、人間に向き不向きのあるのも免れ難いこととして、人を用いる場合にはよくよく注意せねばならぬことである。

当たり前ですが人間には向き不向きがあります。自分の強みがどこにあるかを見極めて適所に力を注げば、成功する道も開けるはずです。

 

 

いままでの一桁程度のページしかない本からすれば100ページ超えは少し冒険でした。長くなっても内容は薄くなるばかりという本もある中、しっかりと詰まった良書だと言えます。後半2割ほどが相馬黒光の書いた部分になるのですが、個人的にはここは読まなくても構わないかなと感じました。

これからビジネスの世界に入る大学4年生にぜひ読んで欲しいですね。