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コンプレックスの捉え方がリアル(芥川竜之介著「鼻」)

鼻

どうも、ジョンです!

明治の文豪・芥川竜之介の有名作である「」を読みました。題名だけは聞いたことがあったのですが、今更初読です。

 

 

芥川竜之介の「鼻」概要

芥川竜之介の作家人生において、かなり初期に書かれた作品です。1916年なので時代的には1915年の羅生門と同じ、東大の学生であったころに書かれました。

「鼻」は発表当時、師匠である夏目漱石に絶賛されたことでも知られています。(芥川竜之介は羅生門のころに、夏目漱石の門下に入っている)

 

あらすじ

あごの下まであるような、長い鼻がコンプレックスの坊さん・禅智内供(ぜんちないぐ)。気にしてないフリをしながらも、色々と自尊心を保つために苦労します。ある日弟子が鼻を短くする方法を持ってきて、見事成功。しかし、その日から今までよりあからさまに周囲の人達がバカにしてきます。「こんなんなら前の長い鼻が良かった」と思った禅智内供。そうして眠ると鼻は一晩で再び長くなり、禅智内供はハッピーになったのでした。

 

傍観者の利己主義

芥川竜之介の初期作品は主に「利己主義、エゴイズム」がテーマなんだそうです。事実「鼻」の作中でも傍観者の利己主義について書かれています。

人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。 

鼻が長いころは馬鹿にするよりも、むしろ「かわいそう」と思っていた町民も、鼻が短くなったのを見て「鼻気にしてたんだwww」と馬鹿にしてしまう恐ろしさ。

そしてこのエゴイズムは、誰のなかにもある普遍的なものなのです。

 

コンプレックスへの向き合い方がリアル

禅智内供はまず長い鼻をなんとか目立たないようにできないか工夫します。ハゲてカツラを被る段階です。しかし鼻はどんな工夫をしても長いまま。失望し諦めます。

次に仲間探しです。人間は孤独に弱いもの。万が一同じような境遇の人がいれば、その痛み、苦しみを分かち合うことができます。心も幾分救われるでしょう。しかし、どんなに探しても同じような長い鼻は1人もいません。

 

こんなことを裏でしながら、表ではコンプレックスなどないかのように振る舞っているのです。人間らしさの塊ですよね。

 

「鼻」はすぐ読める!

芥川竜之介の作品はほとんどが短編で、すぐに読むことができます。既読の方がほとんどでしょうが、まだの方はスキマ時間に読んでみてはいかがでしょうか。

 

鼻