まるでバルニバービの医者だな(ジョナサン・スウィフト著「ガリバー旅行記」)
どうも、ジョンです!
アニメ「PSYCHO-PASS」で槙島聖護が「まるでバルニバービの医者だな」という台詞を吐いて以来、いつかちゃんとガリバー旅行記を読みたいなと思っていました。
今日ようやく青空文庫でじっくり腰を据えて読めたので、その感想をお送りします。
小人の国……だけではない
ガリバー旅行記といえば小人の国が有名です。1章目のリリパット国の話がそれで、ガリバーは小人の国であれこれやってあげて、戦争の手伝いまでしますが、結局政治の争いに巻き込まれて身が危なくなり逃亡します。
次の章では巨人の国ブロブディンナグに流れ着いたガリバー。これも有名ですね。リリパットとはまったく逆の立場になって、農夫に見世物として引きずり回された後、王族にペット扱いされます。自由になりたくなったころ、大鷲に箱(家)ごと連れ去られ、海に落ちていたところ、船に助けられて帰国します。
次についてしまったのは飛島、ラピュタ(ラピュータ)。ここの人はどうでもいい心配ばかりしていて数学と音楽以外に興味がありません。ラピュタに属する国バルニバービでは、ラピュタかぶれのせいで机上の空論ばかり飛び交うように。
次に行ったグラブダブドリブでは、魔法使いが住んでいてすべての死者を呼び出すことができ、古い人たちと会話をしたガリバー。ラグナグ島によると、そこにはストラルドブラグという不死の人間がいました。が、不老ではなく悲惨の極み。
ラグナグから一旦日本に寄って、踏み絵云々があったのち帰国します。
最後の章でついた国は、馬が理性・知性を持っている国。逆に人間は言葉も喋れず野蛮な獣として家畜になっていました。ガリバーは最初驚いていたものの、馬があまりに理性的で居心地が良く、また野蛮な人間ばかりの国には戻りたくなかったので、この国で一生を過ごしたいと感じるように。しかし、やがて追放されてイギリスへ戻ります。
結局人間社会に戻されたガリバーは……
こんな感じの、キラキラした冒険とは程遠い、ちょっと怖い話なんですよね。
これはなんの暗喩?
アニメ「PSYCHO-PASS」でもスウィフトは皮肉の達人だというような台詞があったり、事実風刺作家として知らていました。
なので特に晩年に書かれたガリバー旅行記は皮肉がたっぷり詰まっているのです。それはバルニバービの医者のようなわかりやすいものから、なにかにたとえて仕組まれているものもあります。
したがって「これは何の暗喩?風刺?」と考えながら読んでみると、また違ったガリバー旅行記が見えてくるんじゃないでしょうか。
我々は人間の世界で生きなければならない
小人の国でも巨人の国でも、必ず「イギリスに帰りたい」「同じ人間に会いたい」と願っていたガリバーが、馬の国で「イギリスに帰りたくない」「人間に会いたくない」と初めて願ったというのは恐ろしい話です。
結局、自分を飼っていた馬以外の馬から追放され、帰らざるを得なくなるわけですが。
馬は醜い争いなんてまったくしない理性の権化で、ガリバーからすれば実に理想的だったに違いありません。しかし結局、元の場所へ帰らざるを得なかったというストーリーは、人間はどうあっても理性のみではありえない、人間は醜さもすべて踏まえた上で、生きていかなければならない、現実を見ろというメッセージにも感じます。