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喫茶店が本を売れなくする?(平田禿木著「趣味としての読書」)

「趣味は読書です」というフレーズはもはや無趣味な人という印象があります。実際どのくらい読めば趣味と公言していいものか迷いどころです。

平田禿木著「趣味としての読書」は文化が多様化し読書をしなくなった若者に向けて、(特に趣味として)読書の重要性を主張しています。

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平田禿木 趣味としての読書(青空文庫)

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平田禿木とは

思えば著者紹介をあまりせずに来ました。しかし多少なりともどういう人物が書いて、どういう時代に書かれたものなのかを知っていたほうが、実際読んだ際の理解度も深まると思います。

平田禿木(ひらた とくぼく)[1873-1943]は英文学者及び随筆家。1903年にはオックスフォード大学に留学した経験もあるようです。イギリスの小説家サッカレー「虚栄の市」の翻訳が有名。

明治・大正・昭和初期と生きた人物です。時期的には様々な戦争とかぶりますが、戦争関係では特にヒットしませんでした。戦争はやはり太平洋戦争の方がインパクトが大きいのかもしれません。

 

本が売れないのは喫茶店のせい?

いまでは喫茶店という趣のお店よりもカフェ、それもチェーン店が多い印象を受けます。いずれにせよ現代にいきる僕たちからすると、話をする以外にも勉強や仕事、そして読書をする場所といったイメージもありますよね。しかし著者は面白い文章を残しています。

若い人達が手軽にその閑を消される喫茶店なるものの流行もまた、少からずこの読書の妨げをなしてゐる。この頃本の売れないのは、全くこの喫茶店の跋扈に由来するのである。

 この後喫茶店を潰したほうが本が売れるようになるとも言っていますから、時代を感じますね。しかし今ではむしろカフェが読書を後押しする側面の方が強い。本が売れないのは◯◯のせいだという論調はいつでもありますが、結局のところ読みたい本があればみんな買うんだと思います。

 

読書のすすめ

(前略)相当な閑暇とそれを善用することは、確かに幸福な生に対する寄与である。

 著者は後半、故グレエ子爵の見解を借りることに終始します。彼に全面同意するからこその引用だと思いますが、若干の肩透かし感。グレエ子爵とはエドワード・グレイというイギリスの外務大臣を務めた人のようです。

読書が良い、絶対すべきという理由を著者は挙げています。もちろん読書がいいことは否定しません。ただ確証バイアス的で説得力に欠けるという印象を受けました。随筆だから良いと言われればそれまでなんですけどね。

 

※確証バイアス:仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。(Wikipediaより)