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世界初の推理小説(エドガー・アラン・ポー著「モルグ街の殺人事件」)

 

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エドガー・アラン・ポー 佐々木直次郎訳 モルグ街の殺人事件(青空文庫)

モルグ街の殺人事件(kindleストア)

 

世界初の推理小説

一般に本作品が世界初の推理小説であると言われるそうです。ミステリ研究会でもない僕は読み終えたあと調べてみてその事実を知ったんですが。のちのコナン・ドイルやアガサ・クリスティもこの形式にのっとって書かれているそうです。

ネットから生まれた言葉に「原点にして頂点」という言葉があります。最初に生まれたものがすでに完成されていて後続を寄せ付けないという意味です。しかし通常は原点が頂点に立つことはなく、年月をかけ洗練され進化するのが道理でしょう。

推理小説もまた例外ではありません。あるレビュアーに言わせればモルグ街の殺人事件は非本格であるそうです。推理小説一般のルールとして読者に対する公平性が担保されなければなりません。そういう風に見ると本作品はいささかアンフェアです。

とはいえ小説としては面白く、やはりいわゆるホームズとワトソンの構図をつくった作品として評価されるべきだと思います。

 

C・オーギュスト・デュパンのかっこよさ

本作品に登場する探偵はC・オーギュスト・デュパンと言います。本人は推理家と呼称していますが。彼が知的でかっこいいんですよ。

作中、彼の知的さを表すエピソードとして「私」の考えていることを当てるシーンがあります。

君にはっきりわかるように、まず、僕が君に話しかけたときから、あの果物屋と衝突したときまでの、君の考えの経路を逆にたどってみることにしよう。鎖の大きな輪はこう繫がる、――シャンティリ、オリオン星座、ニコルズ博士、エピキュロス、截石法、往来の舗石、果物屋

デュパンは優れた観察眼と分析力で「私」の思考をたどっていきます。まるでメンタリストのようにです。ちょっと長いので一部抜粋します。

そのうちに僕たちはあのラマルティーヌという小路へやって来た。そこには、重ねて目釘を打った切石が試験的に敷いてあるのだ。ここへ来ると君の顔は晴れやかになった。そして君の唇が動いたので、きっと『截石法』という言葉を呟いたのだなと僕は思った。これはこういった舗石にひどく気取って用いられる語だからね。

 

進化するミステリー 

昔のいわゆる物理的トリックを駆使したものや、読者を騙す叙述トリックなどあらゆる手でミステリー小説は僕らを驚かせてくれます。また「ミステリーの書き方*1」の中で綾辻行人さんが

ひとくちにトリックといえても、いろんなレベルがある。(中略)物語の内側に仕掛けられた(オブジェクト・レベルの)トリックか、物語の外側から仕掛けられた(メタ・レベルの)トリックか、という見方が必要ですね。

 と言っているように、多様なトリックがありまた見せ方も工夫されています。だから一見頭打ちになりそうなミステリー小説が、今でも多数出版され続けて、かつ、評価されていますよね。

ポーの時代から始まったミステリーがどのような発展を遂げていくのか楽しみです。

 

 

*1:

 

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 日本推理作家協会編著,赤川次郎,東直己,阿刀田高,我孫子武丸,綾辻行人,有栖川有栖,五十嵐貴久,伊坂幸太郎,石田衣良,岩井志麻子,逢坂剛,大沢在昌,乙一,折原一,恩田陸,垣根涼介,香納諒一,神埼京介,貴志祐介,北方謙三,北村薫,北森鴻,黒川博行,小池真理子,今野敏,柴田よしき,朱川湊人,真保裕一,柄刀一,天童荒太,二階堂黎人,楡周平,野沢尚,法月綸太郎,馳星周,花村萬月,東野圭吾,福井晴敏,船戸与一,宮部みゆき,森村誠一,山田正紀,横山秀夫
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/10/08
  • メディア: Kindle版
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