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こんな気持ちの頃あった(北條民雄著「童貞記」)

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どうも、ジョンです!

読書をできていない期間が、少し空いてしまったので青空文庫を読んでみました。青空文庫は活字を読むリハビリにも使えるので便利ですね。

今回読んだのは北條民雄の「童貞記」です。

 

 

北條民雄ってだれ?

北條民雄(1914.9.22-1937.12.5)は言うまでもなく小説家です。1933年にハンセン病を患い翌年から隔離生活を強いられ、この頃から執筆活動を本格化させました。

代表作は第2回文學界賞を受賞した「いのちの初夜」。

 

童貞記の感想

「いのちの初夜」の方はハンセン病での隔離生活をもとにした私小説らしいのですが、この「童貞記」はちょっとよくわかりませんでした。

 

「部屋の中で」「月光を浴びたる森の下で」「月光を浴びたる歩道で」という章立てで、主人公は少年。

少年は、部屋で幻影を見て、森で孤独の寂しさと掴まねばならぬものに気付いて、歩道でS子ちゃんに話しかけようとする……という流れ。

 

単純に考えると、片思いの少年の気持ちということですよね。部屋でS子ちゃんのことを考え森は妄想とか心の中での話、歩道のくだりは“少年の心に映る”とあるので、やはり心の中です。

S子ちゃんのことが好きすぎて、でも一歩踏み出せない少年ということでいいのかな?

 

作者のバックグラウンドがあるだけに、なにかの比喩かなんて勘ぐってしまうのですが、タイトルだけで読み始めた僕にはちょっとわかりかねました。申し訳ない。

 

“今や少年にとつて、Sさんの一語は鉄のやうに重くなつてゐる。”

こう締められている「童貞記」。調べてみたところ、入院生活で院内機関誌に発表した初の作品だったようです。そしてこの入院前に結婚しているのですが、ハンセン病が理由で離婚しています。

 

まったく違うかもしれない推測ですが、もしかして「童貞記」にある人ってこの女性のことだったりしませんか?

少年は病院の部屋で彼女のことを思っているものの、話しかけることができないのはこのせいでは……という解釈。

 

まあでも無理がありますね。結婚相手は「祖母方の遠縁の娘」だったそうで、恋愛結婚という感じがしませんし、普通に昔の気持ちを思い出して書いたのかもしれません。

 

 

童貞記

童貞記

  • 作者: 北条民雄
  • 発売日: 2017/02/22
  • メディア: Kindle版